メディカルダイエットとは、医療機関が提供する医薬品や医療機器を用いて行うダイエットを意味します。治療には、生活習慣改善や薬物治療、外科的治療などがあります。
肥満の人はどのくらいいるの?
肥満は一種の現代病で、世界中で大きな問題になっています。日本も例外ではありません。
国の統計によると、BMI(ボディマスインデックス)が25以上の肥満者の割合は、20歳以上の男性の33.0%、女性の22.3%でした。年代別にみると、男性では40歳代が最も高く(39.7%)、女性では60歳代が最も高く(28.1%)なっています。
【BMI(ボディマスインデックス)の計算はコチラ】
https://keisan.casio.jp/exec/system/1161228732
肥満だとなぜいけないの?
肥満は多くの人にとって、単なる「見た目の問題」と捉えられがちですが、決してそうではありません。肥満はさまざまな病気のリスクになります。
具体的には、以下の病気と密接に関連します。
【肥満と密接に関連する病気】
糖尿病、脂質(コレステロール、中性脂肪)異常、高血圧、痛風
心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、脂肪肝
月経異常、不妊、睡眠時無呼吸症候群
運動器(ひざ、股関節、脊椎)疾患、腎臓病 など
他にも「スティグマ」といって、太っていることが原因で社会から差別的に扱われる(社会的スティグマ)、それにより自信がなくなったり、引きこもりぎみになってしまったりする(自己スティグマ)という悪循環に陥ることもあります。
肥満はどのようにして治療するの?
肥満の治療は、大きく以下の3種類です。
【肥満の治療】
①生活習慣改善
②薬物治療
③外科的治療
生活習慣改善
具体的には、食事制限と運動です。これらは「言うは易く行うは難し」で、とっつきやすいものの、減量効果を維持することは多くの人にとって難しいというのが実情です。
外科的治療
胃を小さく形成するなどして、食事量を減らしたり、消化吸収を抑えたりするものです。
当クリニックの医師は、この外科的治療を専門としており、国内屈指の経験を有しています。外科的治療は非常に高い減量効果がありますが、一般的に高度肥満(BMI35以上が目安)の方が対象であること、手術(体にメスを入れる行為)であるため抵抗感を感じる方が多いことなどがあります。
薬物治療
従来の食事・運動療法では十分な効果が得られない、しかしながら手術を受けるのは抵抗がある、と考える方は多いと思います。両者の中間に位置するのが薬物治療ですが、近年、高い体重減少効果を有する薬物が出てきています。
当クリニックでは、患者さんの希望ならびに病態に応じて以下の薬物治療を用意しています。
GLP-1(ヒトグルカゴン様ペプチド-1)製剤(注射)
セマグルチドはヒトGLP-1アナログ製剤で、血糖降下作用と食欲抑制作用を有しており、日本では糖尿病治療薬として広く用いられています。一方、海外では糖尿病を有さない肥満患者さんに対しても使用されています。
【GLP-1の生理作用】
脳の食欲中枢に作用して食事摂取量を減らす、胃や腸の動きを抑えることで食べものが長く胃内にとどまり、満腹感が得られやすくなるなど複数の作用がある
効果について、日本と韓国の肥満者(対象はBMI 27以上で2つ以上もしくはBMI 35以上で1つ以上の肥満関連疾患を有する)を対象に行われた臨床試験(STEP-6)によると、週1回の皮下注射を68週間継続した時点において、1.7mgの投与で-9.6%、2.4mgの投与で-13.2%の体重減少効果が認められました。
セマグルチドの体重減少効果(STEP-6)
出典:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35131037/
GLP-1製剤(経口剤)
SGLT2阻害薬
SGLT2阻害薬は腎臓でのグルコース(ブドウ糖)の再吸収を抑制し、尿中に排泄することで実質的な糖質制限を促す作用があります。SGLT2阻害薬は糖尿病治療薬として広く用いられていますが、同時に体重減少、血圧低下、腎保護作用、心血管疾患・心不全リスクの低減作用など、様々な効果が報告されています。
漢方薬
【防風通聖散の主な効能・効果】
肥満症の改善、便秘の改善、高血圧や肥満に伴う動悸
肩こり、むくみ、蓄膿症(副鼻腔炎)、湿疹・皮膚炎
食欲抑制薬
副作用として口渇・便秘・悪心などが出る可能性があります。また、マジンドールの使用を控えることが望ましい方もおられます(緑内障や重度の精神疾患を患っているなど)。
連続使用は3ヶ月と決まっており、担当医と相談しながら服用・休薬を繰り返す必要があります。
フォーミュラ食
いわゆる薬物ではありませんが、上記いずれかの薬物治療に加えて、フォーミュラ食の併用を推奨しています。
肥満症外科治療の長い経験から、(どのような方法であったとしても)食欲を抑制し食事摂取量を減らすだけでは、たとえ体重計が示す数字が減ったとしても筋力が低下したり、肌や髪が痛むなど栄養上の問題が生じることを我々は知っています。
フォーミュラ食は糖質や脂質を抑えつつ、タンパク質やビタミン、ミネラルなど体に必要な栄養素を効率良く補う「カロリーコントロール食品」です。安全なダイエットを行うためには、減量中の体をしっかりと支えてくれるこれらの栄養が欠かせません。