メディカルダイエットとは、医学的な視点からのダイエット法を指します。具体的には、体重減少だけでなく、生活習慣病の改善や健康状態の維持、生活の質の向上を目指すもので、医師の指導や管理の下で行われます。
この記事では、特にGLP-1受容体作動薬(リベルサス)とSGLT2阻害薬(ルセフィ)という2つの医薬品について、その役割とメディカルダイエットへの応用について説明します。
GLP-1とメディカルダイエット
GLP-1(Glucagon-Like Peptide-1)は、腸から分泌されるホルモンで、食事後の血糖値上昇を抑える作用があります。具体的には、食事によって血糖値が上昇すると、GLP-1は膵臓に働きかけ、インスリンの分泌を促します。また、GLP-1は胃の動きを遅らせ、食べ物の胃からの移動を遅くすることで満腹感を引き延ばします。
これらの作用により、GLP-1受容体作動薬は血糖コントロールを改善するだけでなく、体重減少を促進します。さらに、心血管疾患の予防にも寄与する可能性も指摘されています。
大規模な臨床試験では、特定のGLP-1受容体作動薬が心臓発作、脳卒中、心血管死の3つを合わせた主要な心血管イベント(MACE)のリスクを低下させることが示されました(その効果は、すでに心血管疾患を持つ高リスクな患者群でより顕著でした)。
これらの理由から、GLP-1受容体作動薬はメディカルダイエットに役立つと考えられています。
SGLT2とメディカルダイエット
一方、SGLT2(Sodium-Glucose Cotransporter 2)は、腎臓で働くタンパク質で、尿とともに排出される前に糖を再吸収します。
SGLT2阻害薬は、このタンパク質の作用を阻止し、尿中に糖を排出させることで血糖値を下げる作用があります。この効果により、SGLT2阻害薬は糖尿病の治療に役立ちます。また、血糖値の下降とともにカロリーも体外に排出されるため、体重減少を助けます。さらに、GLP-1受容体作動薬同様に心血管イベントの予防にも効果があるとされています。
大規模な臨床試験では、SGLT2阻害薬が心臓病のリスクを低減することが示されています。具体的には、心不全の発症リスクが低下し、既存の心不全を有する患者では、病状の悪化や心臓による死亡リスクが低下しました。すでに、心不全の治療薬としても使われており、糖尿病の有無に関わらず心不全の患者に対する有益性が確認されています。
メディカルダイエットを受ける際の注意点
これらの医薬品は、メディカルダイエットの一部として使用されます。
それぞれが異なるメカニズムで働くため、これらの薬を適切に組み合わせることで、効果的なダイエットと病態改善が期待できます。しかしながら、全ての人がこれらの薬を安全に使用できるわけではないため、医師の指導と監督のもとで使用することが重要です。
当クリニックには、肥満症治療学会の評議員、日本静脈経腸栄養学会の認定医の資格を有する医師が、最新のエビデンスに基づいたメディカルダイエットを行っております。是非ご検討ください。
著者情報
ルキナ新宿四谷クリニック 院長。日本外科学会専門医・指導医。外科医として悪性腫瘍や良性疾患の治療に従事する中で、患者さんの様々な身体的な「悩み」の治療にも携わる。患者さんの「身体的な悩みを解消し、豊かで麗しい人生を歩んで欲しい」と考え、ルキナ新宿四谷クリニックを開院。